ワクチン接種の必要性について
ワクチンは、接種することで体内に免疫を作り、恐ろしい感染症から体を守るために行います。またもう一つの目的として、みんなが免疫を持つことで、感染症の撲滅や蔓延を防ぐことにもつながります。
ワクチン接種で予防できる犬の感染症
犬ジステンパー
高熱、目ヤニ、鼻水、重篤な嘔吐や下痢などを引き起こす死亡率の高い感染症。
回復してもマヒなどの後遺症が残る場合もある。
犬パルボウイルス感染症
激しい嘔吐、下痢を繰り返す死亡率の高い感染症。伝染性が強い。
犬伝染性肝炎
発熱、腹痛、嘔吐、下痢、眼の白濁などを引き起こし、生後1年未満の子犬が感染した場合、突然死する可能性がある。
犬アデノウイルス2型感染症
風邪症状がみられ、他のウイルスとの混合感染により重症化することがある。
伝染性が強い。
犬パラインフルエンザウイルス感染症
風邪症状がみられ、他のウイルスとの混合感染により重症化することがある。
伝染性が強い。
犬コロナウイルス感染症
成犬の場合は軽度の胃腸炎ですむことが多いが、子犬の場合は嘔吐や重度の水溶性下痢を引き起こす。
犬レプトスピラ感染症
人にも感染する細菌性の病気。発熱、黄疸、歯肉からの出血、筋肉痛、脱水症状から尿毒症など様々な症状が現れ、2~3日以内に死亡することがある。
犬の混合ワクチンの種類
5種または6種混合ワクチン
①ジステンパーウイルス感染症
②アデノウイルスⅠ型感染症(犬伝染性肝炎)
③アデノウイルスⅡ型感染症(犬伝染性喉頭気管炎)
④パラインフルエンザ感染症
⑤パルボウイルス感染症
6種はこの5種類に、⑥コロナウイルス感染症が加わります。
①ジステンパーウィルス、②犬伝染性肝炎、③パルボウイルス、は感染すると死亡率が高いため、コアワクチンとして重要です。コロナウイルスは、単独感染ではそれ程重症にはなりませんが、パルボウイルスと混合感染することにより、死亡率が高くなります。
7種または8種混合ワクチン
5種および6種混合ワクチンに加え
⑦レプトスピラ感染症コペンハーゲニー型(イクテロヘモラジー/黄疸出血型)
⑧レプトスピラ感染症カニコーラ型 が追加されます。
レプトスピラ感染症は、人も感染する人獣共通感染症としても重要です。
いくつかの型(種類)があり、現在予防できる型は5つです。レプトスピラ感染症が含まれているワクチンは副反応が出る可能性が高くなり、ワクチンアレルギーを起こしやすい犬、特にMダックスフンドなどでは注意が必要です。
そのため、体質、飼育環境、生活環境、感染リスクを踏まえた上でレプトスピラ感染症を含まない5種および6種混合ワクチンか、レプトスピラ感染症を含む7種および8種混合ワクチンの、どちらかを選択することになります。
犬 ワクチン9種、10種、11種
8種混合ワクチンに加え、それぞれ
⑨レプトスピラ感染症ヘブドマディス型
⑩レプトスピラ感染症オータムナリス型
⑪レプトスピラ感染症オーストラリス型 が追加されます。
ワクチンで予防できる猫の感染症
猫汎白血球減少症
猫パルボウイルスが原因の胃腸炎で、食欲減退や嘔吐・下痢などを引き起こし、感染力が強く、死亡率も高い。
猫ウイルス性鼻気管炎
ヘルペスウイルスによる感染症で、くしゃみや鼻水、発熱など、いわゆる風邪症状があらわれる。
猫カリシウイルス感染症
風邪症状に加え、口内炎などがみられる。体力のない子猫や高齢猫は要注意。
猫クラミジア感染症
おもに結膜炎やくしゃみを引き起こす病気。肺炎になることもあり、慢性化しやすい。
猫白血病ウイルス感染症
著しい免疫力の低下、重度の貧血、白血病、腫瘍などがみられる。感染すると3年以内に80%が死亡する。
猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)
免疫機能の低下により、口内炎・などの些細な病気でも慢性化や再発を繰り返す。
ワクチンの種類
感染症名 | ワクチン種 | ||||
3種 | 4種 | 5種 | 7種 | 単体 | |
猫ウイルス性鼻気管支炎 | ● | ● | ● | ● | |
---|---|---|---|---|---|
猫カリシウイルス感染症 | ● | ● | ● | 3種類 | |
猫汎白血球減少症 | ● | ● | ● | ● | |
猫クラミジア感染症 | ● | ● | |||
猫白血病ウイルス感染症 | ● | ● | ● | ● | |
猫免疫不全ウイルス感染症 | ● |
屋外に出る猫や、脱走する可能性がある猫などで、猫白血病ウイルスや猫エイズのワクチンをご希望の方はご相談ください。
ワクチンの副反応
副反応とは・・・お薬を投与したときに、効果として期待する作用を「主作用」といい、主作用とは異なる別の作用や、体に良くない作用のことを「副作用」といいます。
ワクチンの場合には、ワクチン接種によって体に免疫反応が起こり、それにより感染症の発生を防ぐ免疫がつくられます(主作用)。この時に免疫がつくられる以外の反応、例えば、発熱、注射部位の腫れ、アナフィラキシーショックなどが発生することがあり、医薬品による副作用とは分けて「副反応」という用語が主に用いられます。
ワクチンの副反応の主な症状は、顔面浮腫(ムーンフェイス)・発赤・痒み・元気消失・食欲低下などや、接種直後(15分以内)に発生することがあるアナフィラキシーショックでは死亡することもあります。
副反応が出てしまったときのことを考え、可能であれば午前中に接種し、午後は自宅で安静にさせ、様子を見てあげられる日を選ぶことをおすすめしています。
また次のような場合は、無理に接種する必要はありません。
場合によっては病状が悪化したり、免疫をしっかりと獲得できなかったりすることがあります。
不明な場合は接種の日程や必要性をご相談させていただきますので、お気軽にご相談ください。
ワクチン接種を控えたほうが良い状況
- 元気がない、具合が悪い
- 疲れている
- 旅行やシャンプーの予定が接種前後の数日以内にある
- 嘔吐・下痢をしている
- 消化管内寄生虫の感染がある
- 病気の治療中(特に、がんや自己免疫疾患)
- 発情、妊娠中である
- 栄養状態が悪い
- 4週齢に達していない子犬・子猫である
- 高齢である
- ワクチン接種後にアレルギー反応を起こした経験がある(※)
-
アレルギー反応を起こした経験があっても、すべての場合にワクチンを控えたほうがいいということではありません。別のメーカーのワクチンに変更する、アレルギー反応の予防を同時に行い接種する、接種せず抗体価(免疫力の評価)を検査する、などの対策も取ることができます。